8合目の山小屋は避難する人が溢れかえっていた。
これから先は正念場だって誰だってわかってる。
ルンルン気分で来れるのは6合目までだろう。
亡くなられた多数の方が眠る墓もあるところだ。
休息を取って頂上へ向かう人はもう3分の1くらいに減っていた。
近所の高御位山みたいに。
なぜなら、
先週まともに通過した台風の一番強い雨と突風で前も見えないしカラダが押されて動けない...
こんな別世界になるとは予想もしてなかった。
休憩を短く先に上に上がって行く犬飼サンも真っ白で見えない。
別の若き3人組の男達も足を踏み外してよろめきながら這い上がって行くのを私はもう少しやで!と励ましながら上がった。
体力はもうゼロ。
気力もほぼゼロ。
むちゃくちゃ厳しかった。
なぜ自分はここまでするのか?と何回も自分に問いかけていた。
3年前の時はあの時の自分を知りに行った。
誰に武勇伝を褒めて欲しいとかではなく、これから先の苦難などを乗り越えられる心の強さを求めて来たから。
厳しい雨の道のりは六甲山全山縦走で超えて来たから強かった。
精神は間違いなく強さを増していた。
人は、限界を超えた体験をするとそれと同等までは耐え切れるもの。
インプラントの歯が割れそうなほどに噛み締めて一歩、また一歩と進んだ。
いよいよ登頂まで100メートルを切った!
なんと
ズブ濡れで犬飼サンはくぐらずに私を待っていたのだ!
『大池サンの言葉で頂上まで来れたんでね。』
昨日まで全く他人だった人と心がひとつになっていた。